3か月で辞めた会社の話・その3

その日の朝いきなり「外回りはしばらくいいから、現場(作業場)で働いてもらう」と指示されました。

商品を売るには現場を知る必要があるので、それが嫌がらせであることに気付かず従ったのですが。

 

初めて入った作業場はほぼパートの方でまかなわれており、自己愛と共に入った入社間もない私に対しても、皆がこれでもかというほど頭を下げるのです。その異様な光景に思考が止まってしまった。

一様に怯えるような泣き笑いにも見える表情をしている。この会社は営業だけが一線を画しているのだと思いました。

自己愛は私を紹介した後、すぐさま一人一人に指導という名の罵声を浴びせながら歩きまわり、作業場の方達はまさに平身低頭でひたすら謝り続けるのでした。

慣れない作業でなかなか上手くいかない私に対しても当然ダメ出しの嵐なのですが、この後は色んな作業をたらい回しにされる事以外同じなので省きます。

 

しばらく様子を見ていましたが、作業場の方は毎日叱責され罵声を浴びせられるのが日常のようでした。

クレームが起これば全員が反省文を書かされる。またある時は会社の改善点を提出させる。しかも帰宅後に書いて明日持ってくるよう求められるのでした。仕事が終わりタイムカードを押させた後、ミーティングと称し何時間も拘束することもありました。

書き出せばきりがありませんが、とにかく酷い。

最初は私にも怯えていた作業場の方は皆良い方ばかりで、世間話をすることも増えてきた頃、ある共通点を見つけました。それが良いか悪いか、本人が不幸だと感じているかどうかはさておき、ほとんどの方が不幸な境遇にあるということ。

お金は必要だけど様々な事情があるため他の雇用先が見つからないといった、どうしようもない背景を自己愛は知っている。それを承知の上で精神的に虐待し他人の時間を奪い疲弊させていた。

当時はまだ営業と現場に大きな溝がある会社が多かったように思います。しかしこの会社はあまりにも異常だった。単に自己愛の奴隷にすぎない。ノースコリアか。

 

1か月近くも経つと、作業場に馴染んだ私は一応営業であることをすっかり忘れられたようで自己愛の愚痴なども聞かされるようになりました。

そしてクレームが出ると分かっている商品を敢えて出荷する所を見てしまう。会話の内容から自己愛に対するささやかな抵抗のようでした。あまりにも未来がない。私は退社を決意しました。

 

潜在意識的には、どんなに不幸でも幸せそうにしている方がいいと言われています。現実でもやたらに弱みを見せない方がいい。

最近どこかで「できるだけ自分の事は語らない方がいい。いつ何がきっかけで他人から攻撃される対象になるかわからないから」といった内容のコメントを見ました。普通の人は当たり前に身を守る術を知っているんだと驚いた。