復讐

前記事の続きですが、彼は犯行の動機について、ネットに自分のなりすましが現れたからだと言っているようですが、確かにきっかけはそうだったのかも知れない。けれどネットというバーチャルな世界を自分の居場所にしてしまうまでに至る理由があったはずだ。

ある時期まで普通に人間関係の構築ができていた彼がいじめに合い、職場を転々とするようになって孤独を深めた原因は自己評価の低さだと私は思っている。そして自己評価を低めたのは母親。

私が気になるのは、母の養育方法が彼の人格形成に影響を与えたと第一審で認定されているにも関わらず「母を恨んでいない、母は関係ない」と言い切っている所です。以前「不幸になっても親への復讐にはならない」と書きましたが、どうしても彼からは同じ匂いを感じてしまう。

 

私が母から最後に聞いた言葉は「なんでこんな子になっちゃったんだろう」でした。激しい言い争いの後、そう呟いて去っていった。「お父さんとそっくり」だとも。

私から見ると父はACだとは思うものの人格障害ではなかった。しかし母は決して「自分は悪くない」のです。それどころか世の中で自分が一番真面な人間だと思っている。自分自身にも、自分の育て方にも何の疑問も持っていない。

あの記事を書いた時はまだ気付いていなかったけれど、復讐の為に自分を不幸にするという行為は愛情の裏返しだったんだと思っている。気付いて欲しい、わかって欲しいと言う無意識の叫びだ。

赤の他人から無差別に殺された人の遺族は加害者の為に自ら不幸になろうとは思わないだろう。自分の人生をかけてまで理解して欲しいなどとは思わないはずだから。

親の思い通りに幸せになって親を喜ばせたくないから不幸になりたい、私もそう考えていた。白黒思考ではその二択しか思いつかなかったのだけど、もう1つの道があります。

親が得られなかった本当に欲しい物を手に入れること。

それは自分を愛することだと思う。満たされない人は受け取ることができないから、永遠に満たされない。私は母に対して、その思いを抱いたまま逝ってもらうことを願っています。

その苦しみを高みから眺めるのが私の最大の復讐だ。