「ありのままでいい」には温度差がある

心に問題を抱えている人が、他人から「ありのままでいいよ」と言われたらどんなに救われた気持ちになるでしょう。なのにその言葉を信じてありのままで接したら嫌われたという人は少なくないと思います。

そんな経験をした方は”信じていたのに裏切られた”と感じるでしょうし、”やっぱり自分は愛されないんだ”とますます自尊心が低くなります。人を信じられず疑心暗鬼になって、心の壁をどんどん高くしてしまうようになります。

 

何らかの原因で深く傷付いた人は、再び傷付けられないよう鎧を着て武器を持とうとします。強くなる為に身に付けたそれらは、いつしか当たり前に身体の一部になってしまう。

しかしそれではどうも上手くいかないので、更に処世術や表面上の優しさを纏うテクニックを身に付けて行きます。

ややこしいのですが本来の自分を隠すための武器を更に隠すために自分を偽っている。本来の自分・武器を持った自分・それを隠す自分の3層構造だと考えればわかりやすいのでしょうか。

例えば本来は楽しい事が大好きだったとしても、親から許されなかった子供はいつしか鎧を纏い笑わなくなります。場合によっては武器を使い、いつも笑っている人を馬鹿にしたり責めるようになります。当然ですが他人との摩擦を生むことになり、愛想笑いをしたり楽しいふりをするようになる。

理解しにくいかも知れませんが本人は無理をして笑っているのです。楽しくもないのに我慢して楽しいふりをしているのです。だから「ありのまま」と言われると今まで抑えていたものが爆発して、不機嫌さを全開に出したり人の喜び事に水を差すなどといった行動に出ることがあります。

 

問題なのは本当の自分だと思っている自分は本当の自分ではないことと、「ありのままでいい」と言った人は本当の自分を見ていること。

誰にも見せたくない本当の自分(と思っている)をさらけだしたから嫌われたのではなくて、本当のあなたとの溝を埋められなかったから離れたのかも知れません。本来の楽しいことが好きな「ありのままの」あなたをさらけだして欲しかったのだと思います。

この温度差によって不幸な結末を迎えてしまう。

 

ACだけではなく、信じていた人からの裏切りなどによって「ありのまま」の自分を否定してしまった方もおられます。無責任な他人のために自分らしく生きられない、愛してくれた人を傷付けてしまうのはとても悲しい。

「ありのままの」自分に戻るためには、インナーチャイルドを癒すことがとても重要だと思います。自分の中の小さい子供や傷付いた過去の自分に沢山の愛情を注いで育て直すという方法もありますね。

産まれてしまえば、自分以外の人間という意味では親でも他人です。他人が全て正しいなんて絶対にありえませんから、押し付けられた観念はさっぱりと捨てた方がいいです。

 

本当の自分は何が好きで、どんなことが嬉しかったのでしょう。本当に欲しかったものは何だったのでしょうか?