Iさんの話17~コミュニケーションコスト~

以前も書きましたが、Iさんはとても多忙ながら常に冷静で合理的に仕事を進める人です。それでいて余裕があり誠実に応えようとする彼を、私は心から尊敬し信頼しています。

一度それらしき事を本人に伝えた時、彼は微塵も表情を変えず小さく頷いただけでした。その態度は謙虚と言うより、彼にとって他人から信頼されることはごく当たり前であるように思えたのです。

 

私は男性に上手く頼れない事をコンプレックスに感じていたけど、本当は頼られたがる人に頼るのが嫌いなんだ。 

頼られたがる人と頼られる人には大きな違いがあります。一般的に、頼る側は相手から何かをしてもらう立場にあり、逆に頼られる側は何かをしてあげる立場になる。それを利用し優越感を感じるか感じないか。

頼られたがる人は、頼られることだけでなく賞賛や過剰な感謝といったオプションを足さなければいけません。頼られることを求められた上に嬉しそうな顔をしなければいけない。私からするとテイクに次ぐテイクなのです。二重取りされる気分。

その割に得るものはほとんどありません。上手に相手を操縦するには有効な手段だとわかっていても、自分を偽ることがただただ面倒で苦痛で仕方がなかった。自己満足の道具に使われたような気になってしまう。

 

Iさんのようにそれらを求めない人は、少なくともその時だけは自分より相手を優先している。自分の感情を優先しないので的確に応えてもらえます。

人に頼られるには、人が持っていない部分を補う必要があると思います。天性のものか努力の結果かはさておき、小手先だけでは通用しない時が来ると思う。

今ならコミュニケーションコストと言うのでしょう。私は随分生きやすくなった気がします。