Iさんの話14~幸せになる覚悟~

Iさんへの想いが変わっていく中、少し困ったことがありました。Iさんのぎこちない態度に周りの人が気付き始めたのです。

あからさまに二人を観察するように見る人もいれば、遠巻きにヒソヒソ話をする人もいました。

幸せ恐怖症の私にとっては辛い状況で、即刻その場から立ち去りたくなってしまう。しかし彼は無表情で一瞥するだけでした。彼は強い。

 

私は過去の苦い経験を思い出していました。お互いに好意があるとわかっているのに、周りの目を気にするあまり相手に冷たく素っ気ない態度をして、始まる前から恋を終わらせてしまったことが何度かあります。

冷やかされるのが嫌いだし、相手にも嫌な思いはさせたくない。でも私の気持ちは言わなくてもわかって貰えるはずだと本気で思っていたのです。その上、去って行った相手を恨んだこともありました。

 

当時の私が今のIさんと同じ状況だったら必死で否定していたかも知れません。そしてもし今の私がIさんに同じことをされたとしたら、気持ちはわかるけどやっぱり辛いと思います。

Iさんの態度を見て、私は初めて相手を傷付けていたんだとわかりました。

今で言う”好き避け”なのでしょうが、そんな言葉で許されるものではありません。私は相手より周りの目を優先したのだから。というより自分の事しか考えていなかった。本当に守りたかったのは自分だけ。

私は最低だ。

 

もう私は周りの目など気にしていられない。Iさんを傷付けることに比べれば他の全てはどうでもいいと思いました。

幸せになるのにも覚悟がいるんですね。またひとつ彼から強さをもらいました。