アリさん

以前の会社の上司に退職の意思を伝えた時、唐突に「パレートの法則を知っていますか?」と聞かれた。知っていると答えた瞬間に頭が真っ白になってしまって、後の話は全然覚えていない。

少し前から、なぜ上司があの場面でそれを持ち出したのか、彼は私に何を言いたかったのかという事が気になって頭から離れない。

パレートの法則とは結果と原因が80:20になる法則で、売り上げの8割は2割の客が生んでいるとかのアレです。今は上位2割の働きアリが全体の8割の食料を集めてきて、残り8割の内の2割は全く働かないという「働きアリの法則」の方が知られているかも知れない。

その上司は2割のアリでいる事を誇らしげにしていたが、その気持ちが全くわからない。私も同様に2割のアリだったけれど嬉しいと思ったことは一度もありません。

私がパレートの法則を知ったのは10代後半で、その時からずっと理不尽極まりないと怒りを感じていた。私は人よりも処理能力が高いと言われるけれど、これまで自分にとって良い結果に結びついていない。足を引っ張られて負担が増えるだけだからです。

なので今の会社では本気を出していない。だけど他人の反感を買わない程度を探るのも疲れるし、私はそこまでする必要があるんだろうかと思い始めた。私はまだあの家族の中にいるような気がしてなりませんでした。

母と兄弟は本当にあの形を望んでいたのか、私が妙な使命感みたいなものを勝手に持ってしまっただけではないかとも思う。いずれにせよ私の役割は終わっているし、そもそも私の役割ではなかったかも知れないのに。

私はもう自己愛から認めて欲しいとは思わない。その対象ではなくなってしまっている。

Iさんは並外れた処理能力を持っていますが、私のような頭の悪い考え方はしないだろう。何を言われても絶対に屈さない強さもある。絶対に敵わないけれど、ほんの少しでもIさんに近付きたい。同じ世界を見られなくても、心の位置をそこに置いておきたい。

そう思いながら働いていると少し変化が見えるようになった。意外にも最初に変わったのは共依存者でした。