優しさは時に

2日間、しばらくぶりの廃人になっていた。満たされてないただの廃人。私はIさんの中にいたからずっと満たされていたけれど、時間を追うごとに現実の彼の存在が大きくなってしまい、あの感覚に戻ることができない。

この2週間、自分が自分じゃないように思えるほど意欲的だった。私は自分が興味を持った物に目標を定めると、とんでもない速さで順応する傾向にある。これまでその力をほぼ仕事にしか使ってない上、却って仇になる場合が多いという経験から、意識してペースを落としていただけに舞い上がっていたのでした。

浜辺で浮かれて走っていたら、いきなり落とし穴に落ちたような気分。習い事だけではなくて気持ちが一気に好転し、久しぶりに高揚感を感じていた矢先の暗転。このタイミングでIさんに会わなければ良かった。とはいってもIさんは何も悪くないので、完全な八つ当たりというものです。

 

習い事でIさんに会った際、彼は私が気まずくならないような言葉を選んだ。Iさんらしいと思ったし、つい最近まで彼の思慮深くて冷静な所を好きなはずだったのに、私は何故かモヤモヤとした苛立ちを感じていた。その原因は、Iさんと以前の恋人を重ねてしまったからです。

私は元彼の決断を長年待ち続けていた。当時自分がACだと自覚したばかりで、依存から抜け出さなければ彼と対等にはなれないと足掻いていました。自分の中ではどっぷり依存していたもののほとんど態度には出さず、彼もまた依存する事を許さなかった。

私は彼との未来の為に努力していたはずが、いつまでたっても変わらない元彼がつまらなく思えてきたのでした。そして彼が決断した時には私が冷めており、あっけなく恋は終わった。これは諦めたら叶うパターンなのかと以前も書いたと思いますが、叶う叶わないの問題ではなかった。

昨夜、元彼の事も含めて色んな事を考えていると、全身の毛が逆立つような感覚と共に、自分の中にオレンジ色の火の玉のような物が現れた。ちょうど胸の真ん中辺りで燃え盛る物体は、意識していなかった怒りの塊だった。

思慮深くて冷静な所が、Iさんと元彼は似ている。しかし本当にそうだったんだろうか。元彼はただ逃げていただけではなかったのかという思いが込み上げてきた。私が勝手に元彼のイメージを作り出し、あたかも実際の彼のように信じてしまっただけなんじゃないかって。

未練があるわけでもないし、今更それが判明した所でどうでもいい事です。問題は私の潜在意識がとんでもない怒りを抱えていたこと。元彼は本当に私の為に努力をしていたんだろうか?変われないならなぜもっと早く私をリリースしようとしなかったのか?それは愛だったのか?

リリースされたとしても当時の私は諦めなかっただろうからあまり意味はない。今の私は『選んだのは自分』だと理解している。そしてこの怒りが、今だからこそ出てきたものだということもわかっている。今の自分が時間差で過去の記憶に怒っているのだとも。

そして気が付けば、死にたいと思ったあの時のようにイメージの中で元彼を機関銃で撃ち殺していました。すると火の玉は消えた。

相手への思いやりから自分の気持ちを偽る事がある。それは広い意味で愛だと呼べるのかも知れないが、優しさは時に残酷だ。