魂の声

一昨日、電話でNさんと話したのはお昼休みのこと。それからNさんとの思い出が脳裏を巡り続ける。Nさんの存在はずっと頭の片隅にあるけれど、それを伝えたこともない。私はNさんに何も返せていない。気が緩めば涙がこぼれそうになる。泣く資格なんてないのに、だ。

勉強・仕事・家事で、私の脳と体はかなり厳しくなってきている。そこへNさんが飛び込んできて精神的なダメージをくらった。私は今、何を優先するべきか。その時点ではNさんのことを考えても所詮推測でしかないので、勉強に集中した方がいいと考えた。それで日記を書いて一旦忘れることにしたのでした。

 

昨日、Nさんに会いに行きました。結論から言うと杞憂だった。長い年月を経て、記憶の中のNさんとは違う女性になってはいましたが、私が覚悟していた最悪の状態ではなかったということです。

手術の後遺症でおぼつかなくなった足元。年齢のせいか舌が上手く回らず、記憶が曖昧な傾向も見られた。「ちゃんとしようと思うけど、(頭が)ついてこないの」と呟く彼女は初期の認知症なのかもしれない。それでもNさんは綺麗だった。

幸いにして彼女を取り巻く環境はとても良く、周りにいる人との談笑の中で足が悪くなった原因を知った。Nさんはニコニコ笑って相槌を打つだけ。愚痴や泣き言を言わないところは変わらない。Nさんは幾つになっても全てを受け入れて生きられる女性なのだ。

結局、また救われたのは私。

だけど私達にはまだ時間がある。新しく始まっただけだよな。あの頃とは違うNさんとあの頃とは違う私で、新たな思い出を増やせばいいだけだよな。

 

余談ですが、Nさんは思いを上手く伝えられないことがあった。言葉が思いつかないのだろう。「どういう意味?」と聞き返す人に、何故か私が答える。大きく頷くNさん。魂の声は形にならなくても聞き取れるものなんですね。