技術

潜在意識の世界へ沈めば沈むほど、思考は現実寄りになる。その道のプロがよく言う「大丈夫だよ♪いいことを考えていればいいことが起きるよ♫」なんてのは、一見ユルくてフワフワしてそうだけども。実際いま苦しい人がそんなことできるのかって。心から「幸せ~♪」なんぞ思えるのかって。

『いいことを考えていればいいことが起きる』

それは多分そうなんだと思う。ただ、言葉をまんま受け取るとただの我慢でしかなく。いくら頭でいいことを考えようとしても、潜在意識には抑圧された感情が澱のように溜まっていき、波動は下がる一方なのだ。俗にいう悪循環ってやつ。

断捨離を始めて間もない頃だったかな。共依存と例の彼女含む女性社員達が、雑談という愚痴の言い合いをしているのを聞きながら仕事をしていた。テーマは介護問題について。「そこまでしなくていいって思うんだけどね、なんだか可哀相になってしまうのよね。」と共依存が言う。意外と情に厚いタイプなのかもしれない。

「わかりますー。でも良いことしてたら、いつかいいことがありますよ。」と応える例の彼女。彼女の口からはちょいちょいこのフレーズが飛び出すんだけど。そんな慰めは果たして本心なのだろうか。そして「いつか」っていつ? 

「良いことしてたら、いつかいいことがありますよ」そう信じているなら愚痴は言うな。言ってもいいけど、私には言わないでもらいたい。実のところ、私は「いいこと」なんかないと思っている。愚痴や文句が出るってことは、ただの我慢でしかないからだ。ついでに第三者を不快にしたお陰で、その「いいこと」は相殺される。

なんてことを思いながら私も人のことを言えない。そろそろ終わりにしなければ。

後日、彼女はその時の会話を引っ張り出してきて、「(共依存)さん、文句言うならしなきゃいいのにね笑」と、私に同意を求めてきた。「〇〇さん、人のこと言えないですよw」って、もう言うしかないだろ。その理由をさらさらっと述べると「あーそっかー…」と項垂れる彼女へ、畳みかけるように本音をぶちまけてみた。

「あのね、人間ってね、本気で嫌になったらできないのよ。文句言いながらでもやってるあいだは、まだ耐えられるってことなのよ笑」「だから気にしなくていいなって思うようになったわ笑」

鈍い彼女もここまで言われたら流石に察したのかもしれない。それから愚痴を言わなくなりました。そして私たちのわだかまりは表向き解消したように笑い合っている。そう、それでいいの。

自分を保てないようなメンタルで「常にいいこと」なんて考えられない。経験者だから余計にそう思う。ゆえに潜在意識にお任せするっつーのは相当の覚悟が必要で、ある意味「技術」なのです。