Sさんを意識するようになる

Sさんと見つめ合って以来、私はSさんを意識するようになって、Sさんも同様に意識するようになります。(単に私が見つめてしまったからだと思いますが)Sさんはとても真面目で、話すのが得意なほうではない方だからなのか明らかに挙動不審になってしまって、私の方が対応に困るほどでした。その久しぶりの感覚が嬉しくて、その頃はSさんの事ばかり日記に書いています。

苦手だった掃除を積極的にするようになったり、洋服の手入れをしたり、美容にも力を入れるようになりました。物事が上手く流れるというか、タイミング良くいい事が増えてきて楽しいと思う時間が格段に多くなっています。

そんなある日「笑顔がとても素敵ですね」と初対面の若い女性から言って貰えるという人生初めての出来事が起こるのです。お世辞だとしても、屈託のない笑顔とまっすぐな瞳で他人にそう告げられる彼女に対して自分がとても恥ずかしかった。

私はそれまで人の笑顔がいいと思ったことがありませんでした。むしろ嫌悪さえしてしていたかも知れません。被害者意識全開で「私はこんなに不幸なのに周りの人はどうして笑っていられるんだ!」という気持ちが根底にあると同時に、自分のいない所で楽しく過ごすのは許さないという親の呪縛から抜け切れていないことに気付く事になります。

その女性には、彼女の笑顔を褒め返してお礼を告げお別れしましたが、ほんの少しでも今日をいい気分で過ごして欲しいと心から思いました。