Iさんの話11~乗り越える力~

この頃からIさんは急に饒舌になったり、話すと顔が赤くなるようになりました。プライベートな事を話す事もあり、何らかの変化があったのだと思います。

対する私はIさんの感情が流れてくるような感覚を持ったのです。目の奥や、言葉と言葉の間の沈黙にあるものがわかるというか。それから1日中Iさんの事を考えるようになりました。

 

とはいえ今まで好きになった人みたいに、Iさんに何かを求める気持ちは全くありません。私は私自身を支えることができるようになっていたからです。

パワハラによって多少のダメージは受けていますが、愚痴を聞いてもらう時も面白おかしく伝えるようにしました。ネタにしてしまえば相手は嫌な思いをせずに済みますから。

私はもう誰かを感情の受け皿にするメリットを思い浮かべることができません。一時は気が晴れるように感じても、ゆっくりと確実に自分を嫌いになっていくだけです。

 

私は家庭環境が悪かったから不幸だと思っていました。普通の人とはスタートラインが違うのだから、普通の人が幸せなのは当たり前だとも。でもそれだけではありませんでした。

普通の人も悩みは持っています。自分だったら耐えられないと思うような苦労を乗り越えている人もおられます。それでも笑っているから幸せそうに見えるだけだとわかったのです。

 

ACの親には「乗り越える力」がありませんから、弱い子供にぶつけるしかないのです。少なくとも私の親は一生持つことなく人生を終えるのでしょう。でも今の私は違う。

私が生まれた理由は、負の連鎖を断ち、本当の幸せを掴む為だと考えるようになりました。