Iさんの話15~人を選ぶ~

私が少し不安に思っていたことが起こってしまった。Iさんが一部の人にからかわれていた所を見てしまいました。遠かったので言葉は聞き取れませんでしたが、しぐさや目線ではっきりとわかったのです。

彼は無言で立ち去っていましたが、蔑むような冷たい目を向けていました。初めて見る顔だった。 

その後、何もなかったかのように相変わらず優しいIさんでしたが、笑顔が少なく、私と視線を合わせることはほとんどなかったのです。

これからIさんにどう接すればいいんだろう。これまで通りでいいのか、それとも彼の立場を考えて素っ気なくした方がいいのかとぐるぐる考えていました。

でも私が考えたところで彼の本当の気持ちはわからない。これまで通りに接しつつ、もし彼が不愉快そうな目をしたその時は退こうと思いました。

加えて、私が他人の目を気にしていないことと、彼の味方であることだけは伝えておこうと、精一杯の笑顔を向けました。

 

Iさんは人の欠点やミスを馬鹿にするような真似はしません。相手が恥ずかしい思いをしたり、傷付いたりしないように敢えて知らないふりをする人です。そういう人ほど、図々しい人から心の中へドカドカと土足で踏みこまれることが多い。

以前の私は自分が好意を持っている人が、自己愛に貶められていても何も言えなかった。その反応を見て楽しんでいるのだとわかっているのに、どちらの味方をするわけでもなくただその時が過ぎるのを待っていた。

人を貶めるのはイジメと同じ。それを黙って見過ごすのもイジメてる人と同じだ。

 

Iさんにあんな顔をさせた人への怒りはありつつも、彼の毅然とした態度はとても素敵だと思いました。

不愉快であることを伝えるのは悪いことではない。例え「空気が読めない」と言われようと、それなりの人にはそれなりの対応でいいのです。”相手にしない”勇気は必要。人は選ばなければなりません。