Iさんの話16~自己の統合~

Iさんが自分の中にいるような感覚は日に日に増していき、そのうち私はIさんなんじゃないかと思うぐらい境目がわからなくなっていました。身体は違うけど何かが同じ?やっぱり上手に説明が出来ない。

 

私は自己愛の暴言には暴言で返すようになりましたが、見限った相手に本気で怒っているのではありません。無視できない時のみ適切な対応をしているだけです。

なのにある日、自己愛の一言に凄まじい憤りを感じたのでした。それはあまりにも突然で周りが見えなくなって、自分が何を言ったのかもはっきりと思い出せない。ただ自己愛が怯む位に喚いた事は覚えています。

自分が言われてもそこまで怒るほどの言葉ではありません。というよりこれまで何も思った事がない。しかし私は何故かIさんを侮辱されたような気持ちになったのでした。

自分に向けられた言葉なのに他人の為に怒っている。冷静に考えるとただの気持ち悪い人です。私は一体どうなってしまったのか。

 

それともう一つ、私は自身が極端な二面性を持っていることにずっと疑問を感じていました。例えば仕事では物怖じしないし人見知りもしないけれど、私生活は悩んでばかりで人付き合いも苦手といった具合です。

どちらも特に無理をしているつもりではないので理由がわからない。これが精神的にとても疲れるのです。

仕事では難なく出来ることが私生活で出来ないことで自分を責めるし、どっちが本当の自分なのかとつい悩んでしまう。世間一般で良いとされる方を褒められると嘘をついている気分になる。 

しかし「認められたい」という気持ちを手放してから、どちらも本当の自分なんだと思えて、ゆるゆる生きるのもいいなと感じるようになりました。

 

仕事で見せる笑顔を自然と見せることが出来た最初の人はもちろんIさんです。その時のIさんの顔は一生忘れないでしょう。

私は本当に欲しかったものにゆっくり近づいていたのだと思います。