自己犠牲

私はメサコンちゃんの事を報告せず、意に反して助長させてしまった。その理由は彼女が母に似ていたからです。

私の母も「ダメな人」で、母の言う事はことごとく明後日の方向へ向いていて全くあてにならない。子供なので従うしかなかったのだけれど、当然間違った結果になる。そしてその責任は子供に押し付けるのだ。息をするように嘘を吐き、いつの間にか私が勝手にしたようになってしまうのです。

お蔭で私が父から殴られていても、母はただ泣くだけで、庇いもしないし自分の非を認めることもない。そして父が寝た後こっそりと私の元へきて、「かわいそうね、お父さんは怖いね。悪い人だね」と泣きながら頭を撫でるのでした。

父も悪いし、何も言えなかった私も悪い。けれど元々の原因を作ったのはお前だ。どうして自分は部外者の顔をして泣いているのか、と思ったけれど言えなかった。自分さえ我慢すればいいと思っていたからです。

 

まだACだと知らなかった私は、彼女と出会って初めてとんでもなく親を憎んでいたことに気付いた。だけど自分が正しいという確信も持てず、我慢するしか成す術がなかった。

彼女を通して母を見ていたから、いつかわかってくれるかも知れないという甘い期待もあったし、何より「死んで欲しい」と思うくらい恨んでいるのに見捨てることができなかった。

行き過ぎた自己犠牲の精神は更に自分を追い込むようになる。努力もせず都合の悪い事は周囲に押し付け、他人の向上を阻む人間にカモにされ続けるのでした。

 

「ダメな人」に自己犠牲の精神を発揮するのは自殺行為に等しい。「ダメな人」とは仕事や能力を指すわけではないと思う。人としてダメなのだ。