お金への罪悪感

私はいつからこうなってしまったのだろうと記憶を辿ってみました。

私が初めて働いたのは小さな工場でした。初任給は額面で10万円前後だったと思う。自立するには敷金を貯めなければいけないし、敷金が貯まっても家賃で飛んでいく金額でした。生活ができない。

期間ははっきりと覚えていないけれど数か月で退職し、ほどなくしてソウルメイトのNさんに出逢い、倍以上のお給料を手にすることになりました。

10代にしては大金だったと思います。けれど当時の私はさほど大金だとは感じなかった。若かったせいか、それが当たり前だと信じて疑わなかった。

そして敷金を貯めてさっさと家を借り自立したのだけど、お土産を持って頻繁に実家に帰っていました。しかし母は喜んでいなかった。

持ち物が少しずつ良い物へ変わっていく私を忌々しい目で見た後、すかさず値段を聞いてくるようになった。その目つきがじわじわと私を追い詰める。

それは母だけではなかった。家族との心の距離が一気に離れた気がしました。お金を稼ぐことを家族の誰も喜んでくれない。私はお金を稼いではいけないのかも知れない。家族に対して罪悪感を感じ始めたのです。

 

人間の記憶は曖昧で、過去は自分に都合のいいように解釈することができます。だから私の過去も、都合のいい後付けの言い訳にすぎないのかも知れません。例えそうだとしても、記憶は塗り替えなければいけない。

そして今思い浮かんだのは、本当にお金が原因だったんだろうかという疑問。もしかしたら家族のカースト制の最下位の私は、常に最下位でいるべきだという圧力だったのかも知れないと。