優しさと安売り

自分を大切にするとはどういうことなのかと、ぼんやり考えていたら成績の芳しくない営業マンを思い出した。私が見てきたそれらの人達は共通点があり、やたらに自分の方から値引きを持ち掛ける。そして進んで過剰なサービスをしようとする事。

通常1万円の価値の物を積極的に半額にするとどうなるか。私はネットでよく買い物をするけれど、欲しかった物が半額だと当然嬉しい。しかし対面で物を売る場合、全ての人が喜ぶとは限らない。

相手が難なく定価で買おうとしている時に値引きを持ち掛けると、馬鹿にされたような気になる方もいる。その上、過剰なサービスまで行うと原価はいくらなのかと疑いたくもなるだろう。何より目の前の営業マンの必死さや自信の無さを感じ取ってしまう。

最初からこういう売り方をしてしまうと、それに群がる客だけになるのだけど、残念ながらその手の客とは信頼関係が築けない。相手が望むのは安さであり、担当の営業マンでなくても誰でもいいからです。

決して値引きが悪いわけではありません。しかしこういう場合は「定価を払う価値がない」と自分が認めてしまっているのと同じだ。そして自らを売れない営業マンだと相手に思わせてしまうことになります。

タチが悪い客だと営業マンの足元を見て更に過剰なサービスを要求し、狼狽する営業マンを見て優越感に浸るといった欲求不満の捌け口にされる時だってある。当然売り上げは上がらない。こうして努力の結果、潰れていく営業マンをこれまで見てきた。

私のやってきたことは売れない営業マンと全く一緒なのです。以前にエネルギーの移行という日記の中で”私はそういう会社を選んだ”と書いておりますが、こうなるように仕向けたのは自分だったんだと今は考えている。

 

所持金が1000円しかないのに、自分よりも困っている(と感じた)相手に全額を渡してはいけない。罪悪感があるのなら、せめて自分のパンを買ってからにするべきだ。

そして、仮に半分渡したとして「まだ500円もあるじゃないか」と奪い取ろうとする輩は『あなたはどうなってもいい』と思っているのだから、さっさと見捨てた方がいいとも思う。

人は簡単に手に入る物には価値を見出せないのだから、優しさと安売りを履き違えてはいけないな。