「冷たい」ってなんだ

鬱病の彼から連絡が来る数日前に私は彼と会っている。時間の都合であまり会話はできませんでしたが、その時に私が元気が無さそうに見えて心配だという名目で電話を掛けてきた。

念のため、一番身近で接している会社の親しい方に聞いてみたけれど、変わらずトークも軽快で全く変化はないとの事で安心した。元気がないんじゃなくて『あなたと関わりたくない』のだと言えたならどんなにスッキリするだろう。

それにあなたは他人の心配より自分の心配をするべきであり、まずは自分の面倒を見ろと言いたい。仮に元気がないとしても、あなたは私を守れない。そして心配だと言った割に、彼の身の上話に興味を持たなかった私は「冷たい」と責められたのだけど、それはどういうことか。

久し振りに聞いた「冷たい」という言葉。私が最初にショックを受けたのは20歳そこそこの時だったと思う。

仕事絡みで知り合って仲良くなり、随分とお世話にもなった年上の女性達の中にAさんはいた。特に親しくしていたのはBさんという女性とAさんで、上手くいっているかに見えた2人の間には私にはわからない女の世界がありました。

Bさんは姉御肌でクールな女性、Aさんも面倒見がいいがお節介とも取れるタイプだった。後になって2人はお互いをライバル視しており、仲のいいフリをしながら牽制し合っていたのだとわかりました。

そんな事など知る由もなく、2人といい関係を築いていると思っていた矢先にトラブルが起きた。Aさんが大切にしている男性をBさんが盗ったのだという。その男性はBさんにのめり込んでしまい、Aさんはおかしくなった。

こういう時3人だと残る1人が間に挟まれがちで、私ももれなくそうなった。けれど私はAさんに同情はできなかった。だってBさんにその男性を紹介したのはAさんなのだから。社会的地位もある素敵な男性だったが、Aさんはまさか彼がBさんを選ぶとは思ってもみなかったのだと思う。

必ず自分を選ぶという自信があったんだろうか。その上で優越感に浸りたかっただけなのか。だとしたら自業自得である。どんな思惑があろうとAさんが紹介した事は紛れもない事実なのだからBさんを責めるのはおかしいと私は思っていた。

しかしAさんからは彼とBさんについて昼夜を問わず私に電話を寄越し、自分は被害者なんだと主張し、同調しない私を「冷たい」と攻め立てた。「他人の気持ちがわからない人」「そんなんじゃ誰も寄り付かなくなる」などとも喚いていた。

そして自分かBさんかどちらかを選べと要求し、私は「どちらかを選ぶなら2人と縁を切る」と言った。その後、彼女はストーカーのように私に粘着して、最後は生霊になった。ちなみに生霊だったと気付いたのはだいぶ後の事で、当時、怪奇現象が頻繁に起こっていたのだけど、それは彼女から貰った物だったのです。

彼女は自分が紹介した事は伏せ、事実を弯曲して周囲に広めて悲劇のヒロインになり、私は周りからも「冷たい人間」だと責められた。私は病んだ。自分では元々ドライだったと自覚していますが、これをきっかけに何かが狂い始めたのかも知れない。

 

「冷たい」ってなんだ。自分の思い通りの返事をくれない人間は冷たいのか。自分の思惑通りに動かない人間は冷たいのか。相手を冷たいと思う思考は自分の中にあるんだよなぁ、昔を振り返ってそんな事を考えました。

私はもう「冷たい」と言われても痛くも痒くもないけどね。痛くて痒いのは誰だ?