肌の話

私は若い頃、顔に疾患を持ったことがある。皮膚炎のようなものだったが全体に広がって長らく治らなかった上に、うっすらと跡まで残ってしまった。そのせいで仕事を選ばなければいけなかったのだけど、なんやかんやと今に繋がっているので結果的には良かったのかも知れない。

だけど私は結果よりも疾患を持った時のことがずっと頭から離れなかった。当時の私は店長をしていた所のオーナーからパワハラを受けて会社を辞めた後、顧客に紹介されたところでほんの繋ぎのつもりで働いていた。ところが事情が変わって引くに引けなくなってしまったのです。

そこが悪いわけではないけれど色々あって私はとにかく辞めたかった。でも自分の意見を言うのもままならない性格なのに適当な嘘をつくなどとてもできなかったのだ。どうにかして納得してもらえるような理由はないかと毎日考えていたのをよく覚えている。

そんな矢先に接客業には致命的とも言える疾患を持ったことは、私にとってラッキーとすら思ってしまった。当然それを理由にして綺麗に辞めることができたのだから。しかし後になって、もしも私があんなことを望まなければ疾患を持たなくても良かったんじゃないかという後悔を捨てきれずにいた。

それはただのこじつけで、何もなくてもなっていた可能性のほうが高いとは思いつつ、潜在意識という言葉すら知らなかったけれど思考にはとんでもない力があるのではないかと思わざるを得ない出来事だったのです。

過去を変えられるなら、私はまずここに戻ると思う。疾患を理由にせず、自分の意思を静かに伝えて退職したかった。そんなことを考え始めたのはGWを過ぎてからだった。

 

真夏のある日、私は顧客の女性がとても綺麗になったのを見て驚いたのですが、どこが変わったのかはわからなかった。「良い事でもあったんですか?」と聞くと、ソバカスが多いのが悩みだったのでレーザー治療を受けたのだと言う。そういえばソバカスがあったかも。

私は綺麗になりたいと思いつつ自分の肌を諦めていた感もあるし、褒められるのが苦手な所も完全には治っていない。だから「綺麗になったでしょ!」と素直に言える彼女が羨ましかった。私に足りないのはこういう所なんだと痛感しました。思考の力の方向性を完全に間違えている。

指輪を注文した時から手指のお手入れに励み、綺麗になっていくのを見て、私も彼女のようになりたいと思う気持ちが高まっていった。そして、たまたまネットで見た情報をきっかけに美白への道を歩もうと決意したのは9月の末だったと思う。

行きつけのお店にいる成分マニアの店員さんにその事を伝えると、いくつかの成分を教えてくれたので、それらをネットで注文した。使い方はやや暴挙だけど、今更どうなったところで大した問題ではないと思ったから短期集中でお手入れを頑張ってみた。

その結果、たった1か月で見違えるほど肌が綺麗になりました。写真を撮っていないから証明できないのが残念なほど。しかも掛かった金額は2千円にも満たないのです。私がその店員さんと知り合ってからもう何年も経つのに、求めなかったから私は願いを叶えることができなかったのだ。

答えは「既にあった」