Iさんの話48~波長のズレ~

似非弱者にモヤモヤしている最中、久し振りにIさんと会いました。会った時は平常運転だったのですが、しばらくするとなんだか怒りが湧いてきまして。私はIさんと恋愛関係になることを望んでいたはずじゃなかった。だけど頑張ってきた結果として、せめて何かの形は欲しい、と思ってしまったのです。

頑張ったのは自分のため、そしてそれはIさんの存在があったから成し得たこと。そんなことはわかっている。それでも。

1日目。私はIさんとどうなりたいのか自分と向き合ってみた。色々考えたけれど答えは見つからなかった。つまり自分ですらよくわかっていない。それでも好きな気持ちはある反面、いつまで好きでいなければならないのかという苛立ちが発生している。義務ではないのだから諦めてもいいはずなのだけど、私はまだ「忘れてしまったら叶う」という認識を採用し続けているから手放すことができない。

いや待てよ?じゃあ「忘れたら叶う」のだとすれば、忘れたらどんな結果になるのか、とも思うが、今のままだと怒りにまかせてブン投げるという最悪のパターンになってしまう。そして「忘れた直後に叶った」過去への怒りまで再燃する羽目になってしまい。『綺麗』に忘れるにはどうすればいいのか。結局「叶わなくていい」と言い続けて諦めることにした。

2日目。苦しい。私は潜在意識に対して意地になっているのか?という疑問が湧く。「忘れたら叶う」「願い続ければ叶う」結局どっちなんだよ、とこんがらがってきた。「叶わなくてもいい」を採用しつつも、なら私のやってきたことはなんだったのかと再び怒りが再燃。良くない。非常に良くない。

3日目。Iさんは誠実でシャイである。そういうところは、あの「忘れた直後に叶った」昔の恋人にとても似ている。もし同系列の人なのだとすれば、今の私からすると非常に厳しく、正直に述べると面倒くさい。これって私はIさんを愛してると言えるのだろうか。いやいや、そもそもIさんは「愛してくれ」など言っていないのだから、悩むのは馬鹿馬鹿しいなと考え始める。

 

こうして悶々としている間、私の脳裏にはもう1人の男性の存在があった。彼は10年来の知り合いで、正直且つ良い意味で天真爛漫な人。私の意識が変わってから、「この人といる時の自分が好きだな」とごく自然にそう思うようになったのです。その人とも恋愛関係になることは絶対にないけど、そんなことよりIさん以上にそう思える人が出来てしまったことは大きな問題なのだよ。

会えて嬉しいのはIさん、会って楽しいのは彼。Iさんは滅多に会えないから会った時に嬉しいと感じるのであって、頻繁に会っても楽しいと思えるかどうかはちょっと謎。Iさんが今のイメージのままの人だとすれば、また昔のように相手の腹を探り、少ない言葉から真意を汲み取る作業を繰り返さなければならないのだろうか。想像しただけでゾッとする。

私はIさんの寡黙なところが好きだったはずなのに。それが時を経てウィークポイントになるとは。ちょっと調べてみたところ、恋愛においては「嬉しい」より「楽しい」方を選んだ方がうまくいくらしい。

私はいつのまにか影を持つ人より楽しそうなオーラを持つ人に惹かれるようになっていたんだ。