Iさんの話50~無常~

書こう書こうと思いつつ、あっという間に日は過ぎていく。

今月半ば、久しぶりにIさんと会いました。前回会ったのは去年10月の頭、ちょうど調整期間に入った頃だ。

私はもうあの時の私ではありません。誰かのために必死で頑張ったり、他人のことで思い煩ったり、そんな私はもういないのです。

Iさんは未だに敏感だ。私の目の色に合わせて態度を変えるところは、今も変わっていない。Iさんから見た今の私はどうなったんだろう。

そんな心配はIさんの顔を見るなり吹っ飛んだよ。それどころか、思いがけず満面の笑みがこぼれてしまった。だって私は今の自分が好きだもの。

この人の背中を追いかけた結果、自分に戻れたのだから。

面白いわけでもないのにIさんの言葉に笑ってしまう私。つられてレアな笑い声を響かせるIさん。なにが楽しいんだろうね。

 

出逢った頃のIさんは純粋で、使命感に燃えていた。一番下っ端だった彼が僅か数年で責任ある立場に就いたのは実力だけではないような気がする。異例の出世のように思えるが、嫌でも『大人の都合』が見えてしまう。

Iさん、この世は正義感や綺麗事だけでは上手く泳げないのよ。『汚いやり方』にだってちゃんと意味があり、むしろそうでなくてはならない事だってあるのよ。

責任・重圧・ジレンマへの隠しきれない感情を私はずっと見てきている。

この間会った時、それらは消えていた。諦めか、それとも清濁併せ吞んだのか。多分後者だと思います。そうだとすれば、おそらく長く深い葛藤があったのだろう。

やっぱりIさんはヒト科として、すごい人なのだ。

 


藤井 風(Fujii Kaze) - "青春病(Seishun Sick)" Official Video

 

『いつかは消えゆく身であれば こだわらせるな罰当たりが』

私も止まらない人でいたいよ。