魔法のランプ

Rちゃんはオーダーを終えるなり、「結局(私)ちゃんはワクチン打たなかったの?」と聞いてきた。「うん」と答えると、畳みかけるように「コロナにもならず?」と言う。「なるわけない」と言い切る私を見ながら彼女は曖昧に笑った。

少し前、部屋の整理をしていたら潜在意識系のDVDが出てきた。自己暗示によって亡くなった人の話を聞いて、「コロナによる死は本当にウイルスだけが原因だったのか」という疑念を持ち始めていた私はその話をしてみた。

すると彼女は意外にも「あー…なんとなくわかるかも」と眉をひそめ、「実はあの癌になってた友達さー、死んだのよ」と言った。標準治療を受けず、引き寄せと民間療法で治そうとしていた人だ。

「頑張って引き寄せやってたよ?でも死んじゃったけど。」その人の周りにいた引き寄せ信者への不信感をひとしきり語ったあと、「結局さ、引き寄せってなんなの?」と聞いてきた。

見も蓋もないことを言えば。標準治療を受けたら治るなんて保証はないし、引き寄せや民間療法が悪とも限らない。過ぎ去ったことへの議論は全て結果論にすぎないのだから。

ただ「人は思い込みだけで死ねる」なら、死を引き寄せることも可能なのである。引き寄せを頑張っている=意識を健康に向けている証拠にはならない。死への恐怖、病状悪化への不安に意識を向けていたなら、普通にあり得ることだと思う。

という話をすると「そういうことか」と納得したようだった。ちなみに、プラセボ(プラシーボ)効果(有効成分が含まれていない薬剤によって症状の改善や副作用の出現が見られること)の反対はノーシーボ(ノセボ)効果というそうだ。

引き寄せは魔法のランプじゃないんです。安易に足を踏み入れるのはお勧めしない。